小美玉市分限免職撤回裁判


 旧小川町は小川町国保中央病院を運営,2006年4月小美玉市が発足すると小美玉市国保中央病院となりました(2008年4月小美玉市医療センターに改称)。しかし,他の医療機関と同様に国の医療制度改革などで医師不足や収入の落ち込みなどで赤字となり,市は十分な問題分析と対策を検討せず,民間に経営を任せる指定管理者制度を2008年4月から導入することを決定。医療法人幕内会(石岡市)が指定管理者となり,市は病院職員の定数をそれまでの70名から15名とし,25名に分限免職処分,2009年4月1日以降は病院職員の職務を廃止して残った職員を分限免職処分にしました。

 原告の上田さんと塩澤さんは1988年旧小川町に臨時職員として採用され1989年技術吏員として正職員になり,塩澤さんは主に検査技師として,上田さんは病棟クラーク,病院事務の仕事をしてきました。原告は2008年4月に医療センター勤務を命じられ,2009年3月31日に他の5名とともに分限免職処分を受けました。原告はこのような一方的な処分に納得できず2名で市の公平委員会に不服申立をしましたが,審理の結果,2010年8月,分限免職処分を有効としました。

 原告は司法の場で公正な判断を仰ごうと2010年12月免職処分の取消を求めて水戸地裁に提訴。原告は病院の経営状態を十分に分析せずに安易に指定管理者を導入したこと自体が問題であり,それにより原告らを分限免職処分にしたのは配置転換がなされた他の職員と比べ不公平で違法だと訴えました。

 しかし,2012年11月に出された判決では,原告への分限免職処分を適法としました。表立って市に対して異議を唱える人がいない中で両名は勇気を持っておかしいものはおかしいと正々堂々主張し,裁判外でも広く市の不当性を訴えてきました。両名は熟慮した結果控訴はしませんでしたが,これまでの経験を生かして厳しい労働環境の改善に取り組む決意を語っていました。

2013.3.20 (弁護士 五來則男)



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