トステム・日系ブラジル人派遣労働者大量解雇事件 和解


 平成22年10月21日,土浦地方裁判所において,ある労働事件が解決を迎えました。
 本件は,アルミサッシ等を製造する大手製造会社・トステム株式会社が派遣契約の解除を通告し,一方的に解雇された派遣労働者の日系ブラジル人100人のうち32人が解雇処分の無効等を争い,派遣先のトステム及び派遣会社のサンワーク株式会社を相手に雇用契約上の地位確認等の請求をした事件です。
 原告らは,トステムで働くことに誇りと生き甲斐を持ち,10年以上にもわたってトステムで勤務してきました。 原告らは,すでに日本で家庭を持ち,もはやブラジルに帰国することもままならない一方,安定した再就職先も見つからず,先の見えない不安の中,トステムらの責任を追及するために裁判を続け,ついに和解を勝ち取ったのです。
 和解の内容は,派遣元サンワーク,そして派遣先トステムの責任を前提としたものでした。
 この和解で勝ち取ったものは,金銭だけではありません。原告らの,労働者としての誇りを勝ち取ったのです。人生の大半は働く時間にあてられます。人は,働くことで自らの生活を築くとともに,自身の人格を形成していきます。働くことは,生きることでもあります。正規労働者であろうが,非正規労働者であろうが,このことに違いはありません。
 本件で原告らが勝ち取った和解が,正規と非正規という身分差別を是正し,この国の未来を支える全ての方が誇りをもって働くことのできる世界を創るための一歩として刻まれることを,願ってやみません。
(弁護士 長瀨佑志)

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