トステム・日系ブラジル人派遣労働者大量解雇事件


トステム・日系ブラジル人派遣労働者大量解雇事件 本件は,アルミサッシ等を製造する大手製造会社・トステム株式会社が派遣契約の解除を通告し,一方的に解雇された派遣労働者の日系ブラジル人100人のうち33人が解雇処分の無効等を争い,派遣先のトステム及び派遣会社のサンワーク株式会社を相手に雇用契約上の地位確認等の仮処分命令の申立をした事件です。派遣切りは全国各地でも問題となっていますが,これほど多くの派遣労働者が提訴に至った事件は,全国でも例がありません。
 
 トステムらは,米国発の金融危機による景気悪化を理由に,やむを得ず派遣労働契約を解除したと説明しています。しかしながら,トステムは,いまなお十分な内部留保を保持しており派遣労働契約を解除する緊急性は認められません。トステムがサンワークと通じて「偽装請負」を行い,労働者派遣法の規制を潜脱しようとしてきたことからも,景気悪化ゆえにやむを得ず派遣労働契約を解除したというトステムの説明が詭弁であることは明白です。

 申立人らは,トステムで働くことに誇りと生き甲斐を持ち,10年以上にもわたってトステムで勤務してきました。申立人らは,すでに日本で家庭を持ち,もはやブラジルに帰国することもままなりません。人が充分に能力を発揮することのできる人間主義を経営理念として掲げるトステムが,雇用調整弁として派遣労働者を安易に解雇し,労働者としての誇りと平穏な生活を奪っていくことは決して許されません。

 申立人らは,安定した再就職先も見つからず,先の見えない不安の中,トステムらの責任を追及するために裁判を続けています。本件は,申立人らの権利を守るだけの裁判ではありません。全国各地で本件と同様の派遣切りに遭った労働者の権利を代表する裁判でもあります。そして,安価な労働力を得るために正規労働者と非正規労働者という新たな身分差別を創出した財界の責任を弾劾するための裁判でもあります。

 皆様におかれましては,引き続きご支援くださいますよう,お願い申し上げる次第です。

(弁護士 長瀬佑志)


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